2012年03月09日

私は運が良かった

私は運が良かった

私は運が良かった。

小さいときは、決してそうは思わなかった。

家庭の事情で、私14歳と弟11歳は父に育てられました。
多感な時期であり、弟にとってはまだ母親が必要な時でした。

父は、戦争で父親を亡くし、3歳の時の事なので父を知りません。
だから、父親とはどんなものか知らないので、私のしていることが父親として正しいかどうか分からないと言いました。

毎日お弁当を作ってくれたり、変な料理を作ってみんなで『まずい』といいながら食べたり、洗濯物にアイロンをかける習慣がなかったり。

母がいたら気がつくことでも父には分からない。
みんなと違う事が、嫌でたまらないと思ったこともあります。
それでも、みんなで悩みながら、喧嘩をしながら愛情を育んで、協力の大切さを憶えて、女性としては気が利かないかもしれませんが、一番大切な「何があっても愛情を持つこと」は教わったと思っています。
感謝しても、感謝しても、まだ足りない。

そんな父が、6年前の冬、急におかしな行動を取るようになりました。
高血圧のお薬を飲んでからはさらに悪くなり、幻覚を見たり徘徊したりトイレの場所を間違えたり。
お薬をやめて1ヶ月。やっといつもの父に戻る日もあり、私と会話が出来るまでになりました。

いつもの父と、様子の違う父。
交互に性格が変わり、いつもの父に戻った時に自己嫌悪に陥る日々。
父は辛かったはずです。

こんな自分は愛されないと心を閉じてしまう父。
なんとか私の愛情を伝えたい。

とても時間はかかりましたが、少し笑顔を見せてくれるようになりました。
父の最後の教え。
介護は、汚物を片付ける事ではなく、愛情を伝える事。

昨日、NHKで震災で生き残れたのに、孤独死や自殺があるのだと特集されていました。

愛する人が亡くなったとき、あの世にいるといわれたら、ならあの世に言って介護しなくちゃと、それが自殺とは思わず責任だと思ってしまう気持ち。
分かりますが、思いとどまって欲しい。

残された人は、自殺した人と同じ苦しみプラス自殺した人に対する悲しみも背負う。
そんな酷いこと、してはいけない。
残された人の責任は、前を向いて進み、人生を全うする事のはず。

私は父が亡くなって4ヵ月後、ペットを飼う事にしました。
毎朝父と、トーストを半分こして食べていた習慣だったので、父が亡くなってからは何を食べても砂を食べているようでした。
ペットが来てから・・・毎朝トーストを取り合う日々。face07
守るべき家族ができた。その出来事は、私に魔法が掛けられたように明るさを取り戻すきっかけになりました。

少々の事は気にしないシンプルな生き方。
父に教わっていたはずなのに、ペットたちに再度おしえてもらいました。

私は運が良かった。


2月に山の中を徘徊し、1ヵ月後に遺体で発見された父。
その間、どこかでお腹をすかしていないか、ひどい目に遭っていないか、どうしようもない悲しみと不安。ちゃんと世話が出来ていない自分を責めて、どんなに寒くても罪悪感で温まる事ができない。
父は私のせいでどこかで寒い思いをしている。

父はいなくなった日の夜、凍死していた事が解剖の結果分かりました。
この事実を乗り越えられたのは、遺体が見つかった事と、ペットのおかげ。

いまだ遺体を捜す方が沢山おられる現実。
津波で海に流されていたら、見つからない。

一人で乗り越えられる苦しみではないはず。
どうにか、周りの方も声を掛け合って、些細な事が励みになったり慰めになったりします。

ふんばろう東北。

ふんばろう日本

ご先祖様だって、乗り越えてきた。
この国の、東北の底力を信じます。




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